セミナー参加・犬のボディーランゲージ講座 中級

2024年1月27日土曜日

犬とお出かけ(埼玉) 犬に関するお勉強

今日はドッグビヘイビアリスト田中雅織先生のセミナーに参加してきました。会場は前回と同様、埼玉県越谷市の「犬の幼稚園&サロンるー。越谷校」です。

埼玉でのセミナーは今回で6回目の参加。田中雅織先生のセミナーは11回目となります。

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今回のセミナーは前回に引き続いて、「犬のボディーランゲージ講座」の中級で、ハズバンダリートレーニングがテーマでした。

今回、チャッピーとクロエは自宅でお留守番。飼い主だけで会場を訪れました。

開始時刻の11時ギリギリに到着し、すぐにセミナーが始まりました。

まず午前中は、ハズバンダリートレーニングの前提となる動物福祉や犬のQOLに関するお話でした。

昼食後は、ハズバンダリートレーニングを実践する上での準備や手続き、コツなどを説明して頂きました。

また、YouTubeの動画では、爪切りや注射に慣れるためのハズバンダリートレーニングの様子も紹介していただきました。

最後のワークショップでは、参加者の愛犬に協力してもらい、雅織先生自らハズバンダリートレーニングの実技を見せていただきました。(写真は右前足を触られるのを克服するトレーニングです。)

予定を1時間ほどオーバーし、17時ちょうどに終了。今回もとても充実した内容でした。

以下、今回のセミナーについての感想です。(あくまで僕自身の解釈によるものです。)
また、他の関連ブログも参考にしてください。

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今回のセミナーは「犬のボディーランゲージ講座」の中級編で、「Ⅱ.ボディーランゲージ中級・ハズバンダリートレーニング」というテーマ。

まずは前置きとして、ハズバンダリートレーニングは単に技術(手順)だけ覚えれば良いのではなく、科学的な理論がベースにあってこその技術であるということ。
理論がベースにあれば、状況に応じて技術を変化させて応用することが可能となります。

【動物福祉と日常のお手入れ】
~動物福祉~

ハズバンダリートレーニングの前提として、まずは動物福祉についての説明。日本動物福祉協会ホームページ動物福祉について」に掲載されている文章をもとに説明していただきました。
【動物福祉】とは一言でいえば、「動物が精神的・肉体的に充分健康で、幸福であり、環境とも調和していること」です。自分の気持ちの思うままに、気の向いたときだけかわいがることは、動物福祉が満たされているとは言えず、「かわいがっている=福祉に配慮している」とは言い切れないのです。

この日本動物福祉協会ホームページにも説明がありましたが、「かわいがっている(愛護:人が主体)」と「福祉に配慮している(福祉:動物が主体)」は全く異なるものであり、ハズバンダリートレーニングはあくまで動物を主体として捉えなければなりません。
例えば、犬の目に目ヤニが付いているとすると、それを取り除きたいと思うのは飼い主の都合であって、犬自身は特にそれを問題としていなかったりする場合もあります。
つまり、犬の問題(都合)と飼い主の問題(都合)をきちんと区別して対処することが大切だということです。
先の例で言えば、犬自身がよほど目ヤニが気になるようであれば、猫が顔を洗うようにして取り除こうとするでしょう。その時に飼い主が手助けする方が、犬からの信頼もアップするかもしれません。

【動物福祉と日常のお手入れ】
~犬のケアとQOL~

犬を主体として考えるとしても、病気や怪我による医療行為や看護行為(ケア)、爪切り・ブラッシングなどの日々のお手入れは、人間の判断で対処しなければならない場合もありますが、その際には犬が抵抗したり苦痛を感じたりしないように配慮することが大切です。
そのために、行動分析学が開発した技法を用いて、犬のQOLに配慮した訓練が必要になります。その訓練技法を体系化したものをハズバンダリートレーニング(HT)と言い、受診動作訓練とも呼ばれています。

ちなみに専門的には、ハズバンダリートレーニングは次のように定義されるそうです。
ハズバンダリートレーニングとは、飼育動物の生理、生態および心理面での管理を可能とするために必要な諸行動の形成と定義される。

【動物福祉と日常のお手入れ】
~ハズバンダリートレーニングの効果~

爪切り、足拭き、顔拭き、ブラッシングなどの場面において、ハズバンダリートレーニング(HT)を実施することの効果を説明していただきました。

HT未実施
  • 作業を嫌がる(逃避・回避行動)
  • 無理やり行なう(健康管理のためだから→人が主体になっている)
  • 余計に嫌がるようになる(QOL低下)
  • 噛むようになる(作業困難)
HT実施後
  • 行動分析を行なう(反応テスト)
  • 嫌がる作業に報酬を提示
  • 作業に対して嫌悪感が薄らいでいく
  • 徐々にステップアップする
  • 作業を嫌がらなくなり快適に作業を受けられる
  • QOLの向上につながる

【嫌がる手入れを好きに変える】HT実践のコツ
~ハズバンダリートレーニングの準備~

ハズバンダリートレーニングを実施するには、まず現状の行動を評価する必要があります。
訓練対象とする爪切りなどの作業を行なってみて、作業のどの部分で逃避や回避の反応が起こるのか、その反応の程度や回数はどのくらいか、といったベースライン(BL)を確認します。
この評価の工程をベースライン測定と言い、この工程をふまえて練習プランを作成していきます。

練習プランを作成する上では、反応が起こらないギリギリのところから始めるように考えます。
観察しながら、反応が安定するまで繰り返し、スモールステップを原則として、少しずつステップを上げていきます。
この時、自分が思っているステップ刻みの3倍で考えていくと良いそうです。

ここで注意点として、例えば「吠える」という行動を「吠えない」ようにする訓練はできません。理由は「吠えない」は行動ではないため、行動に対して報酬を与えて強化するという手続きができないためです。
この場合は、「吠える」という行動を別の行動に置き換えるプランを考えて、その別の行動を強化する訓練をしていくことになります。

そのあと、YouTubeの動画でハズバンダリートレーニングの例を説明していただきました。
爪切りに慣れるための動画では、余計な言葉を発さずに淡々と訓練していました。また、静かな室内の環境で訓練しており、これも余計な刺激に反応しないようにするために大切なことだということでした。

【嫌がる手入れを好きに変える】HT実践のコツ
~練習プランの作成~

ブラッシングを例として、練習プランの作成について説明していただきました。
まずは、ベースライン測定。
ここではブラシが出現すると、逃避・回避反応があるとします。
逃避・回避反応があると判断したのは、顔を背ける、白目が出る、鼻を舐めるといったカーミングシグナルから読み取ったということにします。
弁別刺激(刺激の区別)は、ブラシが顔の正面で1m程度の距離で起こり、それよりも距離がある場合は起きないとします。

以上のベースライン測定の結果をふまえて、まずは練習する上での環境設定を定義します。
この例では、次の環境を設定しました。
  • ブラシは顔の斜め正面、1.1m以上の距離を保つ。
  • 静かで犬が集中できる環境で行う。
  • 空腹時に行う。
  • ベーストレーニングを施しておく。

つづいて、練習の手順と頻度の設定。まず、頻度は次の通りとします。
  • 1日に1回~数回
  • 1回あたり5分まで

そして、手順は次の通りとします。
  1. ブラシを指定の位置に提示する。(刺激の暴露)
  2. 即座に褒め言葉を言い、トリーツを与える。
  3. ブラシをしまい、再提示する。
  4. これを繰り返す。
1試行ごとに反応を観察(録画)すると良いそうです。

反応が安定してきたら、徐々にステップアップしていきます。
ステップアップの基準としては、次の通りです。
  • 1.1mの刺激で、逃避や回避の反応が0回で安定していること。
  • 1.0mに距離を設定して、前述の手順を繰り返す。

ステップアップの注意すべき点としては、上記のような距離が変わるような変化ではなく、「ブラシが近づく」から「ブラシが体に触れる」といったように場面が変化する場合です。

この場合は、場面変化の直前(ブラシが触れる直前)での反応をよく観察する必要があります。
例えば、次のようなスモールステップで観察しながら練習します。
  1. ブラシの背面や先端部を一瞬触れて離す。
  2. 直後に褒め言葉を言い、トリーツを与える。
  3. これを繰り返す。

一瞬でもブラシが体に触れることができるようになったら、ブラシが体に触れる時間を徐々に伸ばしていきます。(刺激の暴露時間と強度の増加)

例えば、次のように暴露時間(ブラシが体に触れる時間)を伸ばしていきます。
  1. ブラシが、0.1秒触れる。
  2. ブラシが、0.2~0.3秒触れる。
  3. ブラシが、5秒触れる。
  4. ブラシが、30秒触れる。
  5. ブラシが、数分触れる。

【行動変容技法の基礎理論】

このセミナーの冒頭で雅織先生が言われていたように、ハズバンダリートレーニングは単に技術だけ覚えれば良いのではなく、科学的な理論がベースにあってこその技術であるということで、ここからは行動分析学の基本となる「レスポンデント条件づけ、オペラント条件づけ、三項強化随伴性」について説明していただきました。

過去のセミナーでも何度か説明を受けた内容でしたが、まだきちんと理解できておらず、今でも腹に落ちていない部分が多かったので、あらためて勉強になりました。

特に再認識したのは、感情が行動の原因にはならず、行動の後の結果によって感情が起こるということ。

オペラント条件づけ(行動随伴性)で説明すると、その感情は次のように分類されます。
正の強化(提示型強化):楽しい、嬉しい
正の弱化(提示型弱化):不安、恐怖、怒り
負の強化(除去型強化):安堵、恐れ
負の弱化(除去型弱化):怒り、焦り、諦め

そして、正の弱化と負の弱化においては、感情から別の行動へと変化することも再認識しました。

正の弱化:不安、恐怖、怒り → 逃避・回避  → 抵抗(攻撃)
負の弱化:怒り、焦り、諦め → 消去バースト → 消去

また、三項強化随伴性の説明では、行動の直前(弁別刺激)と直後(強化子)をよく観察することの重要性を再認識しました。
特に、行動の直後(行動の結果、何が起きたか、直前の状況がどう変わったか)をよく見極めることが大切だということでした。

【ワークショップ】

参加者の愛犬でワークショップを実施。
前足や尻尾を触られるのを嫌がるケースで、先生自らハズバンダリートレーニングの実技を見せていただきました。
実際に自分でハズバンダリートレーニングをやってみるときのコツや注意点などがとても参考になりました。

【エピローグ】

今回は「犬のボディーランゲージ講座」の中級編ということで、ハズバンダリートレーニングをテーマとして、色々なことを学びました。

ハズバンダリートレーニングは受診動作訓練とも呼ばれているように、医療現場での活用を目的としたものです。
これまでは、人が治療を施すことを優先して、犬のQOLについては十分に配慮がなされていませんでしたが、ハズバンダリートレーニングが注目され、活用が広まることにより、医療行為や診断が向上していくことが期待されると思いました。

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今回のセミナーのまとめは以上です。


犬の幼稚園&サロン るー。(越谷校)
住所 埼玉県越谷市北越谷4-23-9-1
電話番号 048-945-9009
受付時間 9:00~18:00
定休日 毎週火曜日

※掲載時の情報のため、ホームページや電話にて最新情報を確認してください。

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