ヒトとイヌの絆 「見つめ合い」が絆を深める

2019年12月13日金曜日

犬に関するお勉強

これまでの田中雅織先生のセミナーの復習になりますが、ヒトとイヌとのコミュニケーションにおいて、ヒトの指差しを理解できるのはイヌだけで、チンパンジーでさえ指差しの意味を理解することができない、というお話がありました。

このことについて、⿇布⼤学の菊⽔健史教授が研究されている情報をもとにして、自分なりに整理してみました。

オキシトシンと視線との正のループによるヒトとイヌとの絆の形成
http://first.lifesciencedb.jp/archives/10063

オキシトシンによるヒトとイヌの関係性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/advpub/0/advpub_67.1.1/_pdf

⾃分が視線を向けたり指さしする対象に相⼿が注意を向けることを心理学用語で「共同注意」と言うそうですが、ヒトとの共同注意に関して、イヌはオオカミやチンパンジーよりも優れていて、最もヒトに類似したコミュニケーション能力を持っているそうです。

こうした能力のおかげで、ヒトとイヌは特別な絆でつながり、お互いを大切な存在として認めながら共生してきたそうです。そして菊⽔教授は、このヒトとイヌの絆の形成について科学的に検証したところ、幸せホルモンの1つとされている「オキシトシン」が関係しているという結果を発表されていました。

このオキシトシンは、一般的に医療の現場においては「アトニン」という薬品名で知られており、子宮収縮の誘発や乳汁分泌の促進などの働きだけでなく、母親のストレス反応の鈍化や不安を軽減する効果もあることから、母性行動の形成に重要な役割を果たすとされています。
その他にも、精神的な安らぎを与えるとされる神経伝達物質のセロトニン作動性ニューロンの働きを促進することから、陣痛や不安の軽減、他者への信頼感や愛情といった効果をもたらすようです。また、このオキシトシンは女性だけでなく男性にも効果があると考えられているそうです。

菊⽔教授が検証したのは、ヒトとイヌが見つめ合った時のヒトとイヌそれぞれの体内でのオキシトシン濃度変化についてでした。飼い主をよく⾒つめるグループとそうでないグループで比較したところ、よく⾒つめるグループではヒトもイヌも尿中のオキシトシン濃度上昇が見られ、ヒトとイヌとの間で化学的な絆が形成されていることが分かったとのことです。一方、オオカミでも同様の実験をした場合には、オキシトシン濃度の変化は見られなかったそうです。

こうした実験結果から、ヒトとイヌとの間での見つめ合いとオキシトシンの関係は、ヒトの母子間で認められるような愛着行動とオキシトシンの関係と同様なものであると結論付けています。

この研究で面白いのは、逆に人為的にオキシトシンを投与した場合の実験もされていて、オキシトシンを投与されたイヌは性別によって効果が異なり、メス犬は飼い主をみつめる行動が増加したが、オス犬は変化が見られなかったということ。そして、ヒトの方もメス犬と交流した飼い主だけ尿中オキシトシン濃度が上昇したということでした。

この研究によって、ヒトとイヌは見つめ合うだけでお互いに信頼や愛情を抱く、いわゆるヒトとイヌとの絆の形成というものが科学的に証明され、「Nature」に並ぶ世界的に有名な科学誌「Science」の表紙を飾ったとのことで、実は有名な研究だったということを後から知りました。

個人的な感想になりますが、動物同士では相手と目が合ったら威嚇や喧嘩が始まる行動も、ヒトとイヌが見つめ合う場合には絆を深める行動になるのだということを知りました。だからといって、見ず知らずのイヌに対していきなり目を合わせたら、きっと威嚇されるでしょうね。

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